一指禅功点穴療法小児治療2例
小児科領域では「喘息」および「滲出性中耳炎」は頻繁に見られる疾病である。「喘息」は抗アレルギー薬およびステロイド剤により症状のコントロールを行うことを主とするのが一般的である。滲出性中耳炎は鼓室に液体が貯留した状態で、痛みを引き起こし、聴力にも影響することがある。主に鼓膜切開、抗生物質の内服、粘液溶解剤、アデノイド切除術などの方法を用いることが多い。
本症例は著名老中医劉永言先生により伝えられた一指禅功点穴療法を用いて「喘息」および「滲出性中耳炎」の患者に治療を行い、著効が認められたので報告する。
症例1(喘息)
患者、3歳、男、年4月20日初診。
主訴:咳(ヒューヒューする呼吸)、大便不通、易疲労
元来、呼吸器が弱かったが年1月初旬より容体悪化。年より北京に引っ越し、環境が変わってから非常に疲れやすくなり、風邪を引きやすくなる。また、同時に喘息の発作が頻繁に起こるようになる。病院にて喘息の確定診断を受ける。そのため、平素より抗アレルギー薬の服用およびステロイド吸入を指導されている。
服薬:抗アレルギー薬(Singlair4mg)、ステロイド(Pulmicort)吸入。
手足の冷え甚だしい。三関虎口右手示指に青色血脈あり。舌淡白湿潤
弁証:腎陽虚、脾陽虚、肺気不宣。
治則:温煦脾腎、益気行血、宣降肺気、化痰止喘。
脾陽虚により土湿不運のため易疲労しやすく、脾失健運により気血を巡らせる力が衰えるため、手足が冷える。脾虚のため「土不生金」により肺失宣降になる。脾陽が虚せば脾気が昇らず、脾気が昇らなければ胃気が降りない。胃気が降りなければ上逆して肺を衝き、肺気は上逆し咳が頻発することになる。肺と大腸は表裏関係にあり、肺気が降りなければ大腸の伝導作用に影響し便秘になる。舌が淡白で湿潤なのは脾陽虚の証である。食指に青い血管が浮いているのは内に瘀滞がある証である。
配穴?手法:
①中指を「捏按法」[]しながら安土穴(本家穴、一指禅功独特の穴)を「点按」し、火より土を生かす原理を以て脾土を安定させる。足三里および解渓を「点按法」を用いて胃気を降ろすことで肺気の上逆を治める。衝上穴(本家穴、一指禅功独特の穴)に「懸点法」し肝気を疎通させる。手腕横紋に「揉按法」を行い、脾土を調える。中脘、天枢にて和脾胃、昇降を促し、運化を助ける。
②命門、腎兪「懸点法」を行い温煦腎陽および補益腎精、督脈に圧脊法を行い、一身の陽気を強める。
③内関?外関に「透点法」(一指禅功独特の手法)を行い、開胸および肺気を調える。少商?太淵?魚際にて「点按法」を用いて肺気を補い、全身の気機を強める。中府、雲門にて肺気を補う。肺兪、定喘で化痰止喘。
④頸椎の調整。治療のまとめとして神闕、百会に「懸点法」を施し、補気を行い丹田に気を下ろし全身の経絡の気を調える。
経過:
1診(4月20日)初診時、昼寝中だったので、肺俞付近と身柱付近に点穴を施す。その後、「中土之気」を動かし、丹田の気を補う手法をおこなう。その晩、便通あり。咳は朝まで続くが、翌朝に白く透明な痰を大量に吐く。その後、咳が劇的に軽減。
2診(4月22日) 夜は咳が納まったが、明け方咳が出る。7時ごろ、咳と共に大量の白色の痰を吐く。また、便が大量に出る。その後、咳の回数が減少する。肺気不通のため、大腸の伝道作用が衰え便秘が起こり、中気が弱いので食欲も少ない。
3診(4月23日)治療後から腹痛あり。今日、非常に臭い大便が出る。排便後、腹痛消失。手が温かく、元気が出てきた様子。咳を少ししているが、呼吸が楽な様子である。
4診(4月26日)指の血脈、両側ともに薄くなってきた。この3日軟便。咳少しあり。
その後、1週間に2回の治療を続け、10診目にはほとんど咳をしなくなる。食欲が出てきて、毎日便通があり、常に手足が温かくなる。2か月後には病院で処方されている薬を完全に止める。以後、体調管理のため、夏休みと冬休み以外は1週間に1回の治療を続ける。筆者帰国のため、年6月下旬にて治療を終了する。
考察
西洋医学の喘息治療は抗アレルギー剤とステロイド剤を用いることで、症状が起きないようにするが、根治を目的とした治療ではない。咳のため、夜の睡眠に影響があり、普段の生活で幼稚園にて友達と遊ぶのに支障がある子供が完全にステロイド剤および抗アレルギー剤を離脱し、風邪を引いても喘息発作が起こらなくなったのは、外気治療により陽気を補い、五臓六腑(特に脾胃)の機能が改善されたことで、気血旺盛な状態になったためであると考える。
病院で処方された薬を全て中止し、喘息症状が完全に消失。年2月、一時帰国の際、肺炎になるが喘息発作なし。年12月、患者の母親と連絡するが、喘息の再発はないと確認した。
症例2(滲出性中耳炎)
患者、女、6歳、年6月2日初診。
主訴:耳痛、鼻血、くしゃみ、いびき、腹痛、
病歴:滲出性中耳炎のため、頻繁に耳痛があり、左耳の聞こえが悪い。鼓膜に穴を開けて貯まった水を取り除く手術をしたが、出てこないため経過観察することになる。中国の病院で処方された漢方薬(蒲公英、浙貝母、薄荷、白茅根、生甘草など清熱解毒、涼血止血を主としたもの。)を6ヶ月ほど飲むが全く症状に改善が見られなかったため、今回受診することとなる。
日本の某病院にて滲出性中耳炎、アデノイド(扁桃体肥大)、アレルギー性鼻炎と診断される。毎朝5時にくしゃみで目が覚める。5歳からの一年間で身長が1cmのみの成長。頻繁に腹痛がある。食欲あり。軟便。顔色灰色、黒、つやはあるが暗い。腹部の膨張。
弁証:脾腎両虚、中気不足、胃胆肺の気逆。
治則:補腎健脾、昇清降濁、宣化清降肺気、通利鼻竅、聡耳開竅。
「中気」は回旋しており、脾は昇清を主り、胃は降濁を主る。脾気が虚せば、脾気不昇し清気下陥するので腹部膨満が生じる。脾気不昇なれば胃気不降が生じ、濁気の上逆に伴い衝気も上逆する(衝気は陽明に属す)。更に肺気を上逆させるので鼻血、鼻塞、くしゃみを生じる。腎気虚により封蔵できず、胆経相火不降し、中耳炎を生じる(腎は耳に開竅し、胆経は耳に入る)。
配穴?手法:
①命門、腎兪「懸点法」を行い温煦腎陽および補益腎精、督脈に圧脊法を行い、一身の陽気を強める。
②中指を「捏按法」しながら安土穴を「点按」し、火より土を生かす原理を以て脾土を安定させる。足三里および解渓を「点按法」を用いて胃気を降ろし、腑気を通す。衝上穴に「懸点法」し肝気を疎通させる。手腕横紋に「揉按法」を行い、脾土を調える。中脘、天枢にて脾胃を和し、運化を助け、統血作用を強化する。
③内関?外関に「透点法」を行い、開胸および肺気を調え,宣化清降肺気。少商?太淵?魚際にて「点按法」を用いて肺気を補い、全身の気機を強める。中府、雲門にて肺気を補う。迎香、聴宮にて通利鼻竅、聡耳開竅し、局所の気機を改善させる。
④頸椎の調整。治療のまとめとして神闕、百会に「懸点法」を施し、補気を行い丹田に気を下ろし全身の経絡の気を調える。
経過:
6診(6月18日)夜間におけるくしゃみ、2~3日鼻血が出ない。腹痛なし。
8診(6月25日)いびきをかかなくなった。
3週間ほどでいびきが消失。一ヶ月ほどで鼻血およびくしゃみが消失。
3ヶ月後には2~3回ほど、授業中に突然耳から浸出液が出る。治療中に耳に違和感を覚え、耳の穴を掻くと浸出液が認められた。
初診から一年後、一時帰国の際に耳鼻咽喉科を受診、鼓膜内の滲出液が認められなかったため完治と診断を受ける。アデノイドも同様に完治。
治療は患者が北京にいる間は1週間に2回の治療を行う。その後、食欲は旺盛で骨格がしっかりしてきた。風邪を引いても中耳炎にならなくなり、腹痛も起こらなくなる。1年後には身長が5㎝伸び、小児における「五遅」の症状にも改善が見られた。
考察
薬の内容から中医師はアデノイドおよび滲出性中耳炎を実熱証と認識し、鼻血を血熱と捉えていたと推測する。しかし、効果がないばかりか、患者の顔色から判断すると正気を傷つける結果となっていたのは明白である。現代医学の治療と不適切な漢方薬の処方では改善が見られなかったアデノイドと滲出性中耳炎が一指禅功点穴療法で顕著な回復を認められたことで外気治療の有効性を確認できた。
結語
本症例は異病同治の典型である。症状と病名も異なるが健脾益気と肺胃の気を粛降させ、患者自身の円運動を促進し、良好な治療効果を得た。小児の疾病では呼吸器系統(肺金)と消化器系統(脾土)が基礎となる。脾肺の昇降作用を回復するには中土脾胃の運化(土能生金)が重要である。
本症例では西洋医学で解決できなかった「喘息」と「滲出性中耳炎」に罹患した子供が、一指禅功点穴療法を通して完治したことから、今後、小児科領域での有効性と耳鼻咽喉科疾患ならびに呼吸器系疾患に対して新たな治療法の選択肢としての可能性が期待される。一指禅功点穴療法は便利で副作用もなく体質改善にも有効であり、子供に最適な治療法の一つであると考える。
本論文は廖赤陽教授と廖萃萃先生の指導により完成した。謹んで両先生に心より感謝を申し上げる。
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